Race Search

大会検索

Race Report

第30回みなと酒田トライアスロンおしんレース

開催日
2015年6月28日(日)
開催地
富山県
天候
曇り
気温
21℃(9時)
水温
19.5℃(9時)
エントリー数
466名

取材した人:渡元春

30回目を迎えた酒処、米処の町「酒田」で行われる「おしんレース」

2015年6月28日(日)山形県酒田市において、「みなと酒田トライアスロンおしんレース」が開催された。少数の地元の有志で始まったおしんレースは、今では東北地区最大の大会として人気を集め、今年で30回目を迎えた歴史ある大会だ。
レースの舞台となる酒田市は古くから湊町として栄え、今なお趣きある町並みが残されている。全国でも「酒」という文字を使う市は他にないそうで、「酒」と「田」が表すように、酒処、米処としても有名な町だ。酒田港に集まる海の幸、庄内平野と鳥海山が育む山の幸にも恵まれ、美味しいものが溢れる町でおしんレースは行われる。この大会に今回参加してきたので、レースの魅力などをレポートする。

前日もちびっこジュニアアクアスロンで大興奮

レース前日の土曜日、午前中から第6回ちびっこジュニアアクアスロン大会が光ヶ丘プールで開催された。小学1年生から中学3年生までウェーブ形式でスタートしていく。低学年からスタートするため、最初はかわいいちびっこの泳ぎからウェーブが進むごとに迫力を増していく。大人顔負けの泳ぎ、そしてトランジション後にペース配分など気にせず、最初から全速力で走っていく子供たちの姿に感心。そして、ゴール地点では笑顔でフィニッシュする子供、泣きながらフィニッシュする子供など、参加した子供たち一人ひとりの思いが詰まったとても素敵なシーンだった。
レース後の表彰式に先立ち、JTU中山俊行次世代強化チームリーダーから「今日のレースを精一杯がんばった人は手を上げてください」と呼び掛けられ、元気よく手を上げて応える子供たち。そんな様子を見て、中山氏は「調子がよくても悪くても、いつも精一杯がんばることが大切です」と話した。大人子供を問わず、トライアスロンを楽しむすべての人に当てはまる素敵な言葉が印象的だった。

酒田トライアスロンフェスティバル&前夜祭に選手集結

土曜日の午後からは、勤労者体育センターで選手受付と酒田トライアスロンフェスティバルが開催。受付では選手全員に大会オリジナルラベルの貼られた酒田の地酒「清泉川」が渡され、さらに女子選手全員には梨のワイン「梨のミューズ」も渡された。受付の隣では「獅子焼き」が選手全員に振舞われる。獅子焼きは酒田市の一大イベント「酒田祭り」のシンボルとなる獅子の顔がかたどられたお菓子で、もちもちっとした生地の中に甘い餡子が入ってとても美味。その他にも、会場には地元のお土産販売やトライアスロンショップなどのブースが並び、会場を盛り上げてくれた。
受付を済ませた選手は、体育センター向かいの勤労者福祉センターで競技説明会を受けた後、前夜祭に参加。前夜祭会場では、最初に併催のU23日本選手権に参加する将来有望な若きエリート選手たちの記者会見が行われ、続けて大会関係者各位の挨拶の後、前夜祭がスタート。テーブルには、翌日のレースに向けたカーボローディングとして、焼きそばやパスタ、庄内米を使ったおにぎりなどが並び、さらにはビールや酒田の地酒も豊富に用意。舞台上では舞妓さんの踊りや参加大学チームの紹介、エイジトップ選手の挨拶、抽選会などが行われ、参加者は存分に楽しんでいた。

荒天のためにレースはデュアスロンに

大会会場となる酒田の天候は、レース前日までは雨こそ降ってはいたが、スイム会場も穏やかで各競技に支障はないと思われていた。しかし大会当日、早朝からの雨とともに海上はかなり波が高くなっている。この状況から、昨年に続いてのスイム中止となり、デュアスロン形式でのレースに。自分を含め、3種目を楽しみにしていた選手にとって残念な決定だが、スイム会場の明らかに荒れたコンディションを見て、選手たちは気持ちを切り替えていた。

【第一ラン】

第一ランはランコースを1周回する3.5kmのコース。スタートの場所からはスイムが行われるはずだった場所を見ることができる。そこにはかなりの高波が発生していて、このコンディションで泳ぐのは厳しいことは誰の目にも明らか。そしてきっぱりとスイムへの未練を捨て、第一ランのスタートを切る。フラットなコースのため、全体的にペースが速く、最初から息を切らして飛ばしていく選手が多い。コースは、海沿いにしばらく行くと直角にカーブし、海から離れて進んで折り返しとなる。4車線を使った広い道路と左右に広がる松林のランは視界が広く、心も自然と開放的な気分になっていく。

【トランジション&バイク】

おしんレースは、トライアスロンの第4の競技であるトランジションも魅力のひとつ。トランジションは広い芝のグラウンドに設置され、ふかふかの芝生が気持ちいい。足元の緑とさえぎるものがない広い空を見ながら、バイクに向けて心が弾む。他の大会に比べるとバイクラックの幅が広く、エリート選手のように選手一人ひとりにカゴまで用意されている。この広いトランジションで落ち着いて準備を整え、いざバイクスタート。
バイクは全長13.3kmのコースを3周回、主会場を出てランとは反対方面に進む。全体的にフラットなコースではあるが、カーブも多くなかなかテクニカルな設定だ。ただし、道幅はランコース同様にかなり広く開放的。カーブするたびに景色が変わり、随所で鳥海山も眺めることができた。雨天のため頂上付近は雲に覆われていたが、その存在感に圧倒される。天気がよければもっとすばらしい景色が広がるのだろう。そして、風力発電用の風車が立ち並ぶ最後の長いストレートの先で折り返し、来た道を戻っていく。
想像していたよりも飽きのこない素敵なバイクコースだった。

【最終ラン】

素敵なバイクコースを無難に走り終え、いよいよ最終の第二ランへ。第一ランで走ったコースを3周回、全長10kmのコースとなる。周回の度にフィニッシュゲートの横を折り返すため、メイン会場に集まったたくさんの応援の歓声を受けて元気をチャージできる。さすがに後半は疲労もあったが、最後は青いカーペットが敷かれたフィニッシュロードを駆け抜けて、笑顔でフィニッシュ。

荒れた海でスイムも行われたU23日本選手権

私がフィニッシュするより一足早く、U23日本選手権がスタート。朝と同様、この時点でも海は荒れていたが、男女各選手は沖に向かって泳いでいく。
安全管理の点からウェットスーツ着用が義務となり、各選手はウェットの浮力で波の上下に苦しめられていた。沖に出ると波の影響が多少弱まるものの、折り返して陸に上がる際には波をうまく利用しないと上陸を阻まれる。集団から離れて高波のせいで方向がわからなくなる選手が出るほどのコンディションだったが、高い波を超えていく若き精鋭の泳ぎは圧巻だった。
バイクやランも、さすがにエイジとは切れ味の違うスピードだ。男女各優勝者にのみ与えられる世界選手権のキップを目指して、持てる力を精一杯発揮する若い選手たちの勇姿に大きな声援が飛んだ。男子はバイクを13位で通過した小林大哲選手が圧倒的なランで見事に逆転優勝。フィニッシュテープを掴んで何度も絶叫する姿には、優勝への強い気持ちが伝わってきた。女子はバイクを4人の集団でフィニッシュした松本文佳選手が、ランのスタートから先頭を引っ張り、後続をどんどん引き離して最後は2分45秒の差をつけての圧勝。フィニッシュテープを切ってすぐに倒れこみ、一人では立っていられないほど力を使い尽くしての激走に感動した。
優勝した小林選手、松本選手にはU23世界選手権での活躍を期待したい。

名物のカレーをはじめ、フィニッシュ後にも楽しい演出

フィニッシュ会場では、今年もおしんレース最大の名物「カレーライス食べ放題」を実施。早朝から野菜を切ったり、米を研いだりしながら、焚き火を使って作ったカレーで、地元のおばちゃんたちが次々とよそってくれる。レースで疲れた体に温かいカレーは最高。その場で食べ終えて、すぐにおかわりをする選手もいるほど。このカレーライス、選手だけでなく応援の人や関係者、ボランティアなど、会場にいるすべての人に何杯でも提供してくれる。なんと、このために1,500食のカレーが用意されていた。
選手には山形名産の玉こんにゃくもふるまわれ、レース終了後も楽しめる大会となっている。全レース終了後に表彰式。入賞者への景品も豪華で、ブランド米「つや姫」や日本酒、お菓子などたくさんの賞品が渡された。また表彰式後にはじゃんけん大会などでさまざまな賞品が参加者に配られた。

大会に参加して

30回記念大会として開催された今年のみなと酒田トライアスロンおしんレースは、例年以上に参加者をもてなす工夫や実行委員会の思いが随所にちりばめられたすばらしい大会だった。レース前日の土曜日は、大会スタッフだけでなくスポンサー企業のボランティアの方々まで参加して、早朝6時からスイム会場の清掃が行われた。レース当日は、選手よりも早く会場に入ってカレーライスの仕込みをする地元のおばちゃん。レース後、数時間で清掃および機材を撤収する大会ボランティアの方々など、おしんレースは多くの方々の協力で成り立っている。
そして、実行委員会の方々のトライアスロンへの情熱、おしんレースに参加する選手に楽しんでもらいたいという熱い思いが、この大会を動かしている。そんな思いを感じ、酒田の風情と食を楽しみに、ぜひ来年も多くの選手に参加してほしい大会だ。

渡元春

トライアスロンスタイルの新人。元テニスプレーヤー、現カヌー選手。
トライアスリートに俺はなる!

前のページに戻る